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2009.02.14 *Sat

ロクティエ♀小説「この出会いに幾万の感謝を」

本日はバレンタインですね!…畜生、世の中浮かれやがって(←)
来週の進級試験のためひぃひぃ言いながら勉強中の一二三です。
やばい…なにこの情報量!朝から晩まで部屋に引きこもりです。おわらな…!
バレンタイン用のSS書きたいーとか思ってたらこのザマだ!
リアルバレンタインもめんどくさいので延期(ひでぇ!)

バレンタイン…フェルトとティエリアの妖精二人が「ニールのために」とか言いながらチョコ作ってたらとってもかわいいと思います^^(NTのがゆんティエリア漫画見て以来、どうもこの二人が百合妖精に見えて仕方がない)
「あの、ニールにチョコを作ろうと思って…ティエリアも、一緒に作らない?」
「そうだな…僕も作りたい。バレンタインは大切な人にチョコを贈る日なのだろう?」
「バレンタイン!ロックオン、ヨロコブ!ヨロコブ!」
とか言ってる二人に、無邪気に「私も一緒に作りたいですぅ!パパ用なのですぅ♪」とミレイナが絡んできて。そこに、バレンタインを知らなかったマリーも「私もよかったら参加してもいいですか?」と参加してきて。料理上手のアニューは「次は生クリームを混ぜるの。そう、そんな感じよ。」とみんなのお姉さん役。それを「(あの子達ったら…可愛いわねぇ)」と優しく見守るスメラギさんと、自分達用のチョコなのかとwktkする男共。
そんな、ほのぼのバレンタイン!本編が不幸まっしぐら路線だからこそ、あえて仲良しほのぼの!


というわけでバレンタイン仕様ではありませんが、CB病院パロのロクティエ出会い編です!
注意事項
*CB病院パロ設定(ティエリア女の子・ニール救急医)
*フォンダンショコラ並みに甘いです(←)

追記より小説です!
********************
気難しい単語ばかりが踊る論文とにらめっこを始めて、どれくらいたったか。

 俺はただいまリビングのソファーに座り、明後日に行われる教授を交えたカンファに備えて論文を読んでいる真っ最中だ。家に帰った後も仕事をするのは正直なところ苦痛だが仕方がない。ここでちゃんとやっとかないと、うちのボス―救急部教授Mr.ハーキュリーに色々と突っ込まれてボロが出ちまうだろう。生真面目で理想家なうちの教授は怒らせると大変怖いことで有名だ(そういや病院長であるセルゲイ教授と旧知の仲って聞いたことあるな)
 しかし、そろそろいい加減集中力が切れてきた。小難しい実験のデータがずらずら書かれた最新の論文は読むのに骨が折れる。俺は論文をテーブルに放ると、凝り固まった身体をほぐすように腕を頭上で組んでぐっと伸びをした。そんな俺の鼻腔を不意に紅茶の良い香りがふわりとくすぐる。その匂いにつられて顔を上げれば、ティエリアがティーカップを持って立っていた。
「お疲れ様です、ニール。」
「お、サンキュ。」
 淡い桜色のエプロンをつけ、紅茶を差し出す姿がいかにも若奥様といった感じで、思わず顔がだらしなく緩んでしまう。なんというか、こういうのってたまらないんだよなぁ。男というのは、どうにもエプロンというものに弱い生き物だと思う。
 にやにやと笑いながらティエリアの横顔を見つめれば、その視線に気付いたティエリアは訝しげな顔をする。
「…私の顔に何かついていますか?」
 小首を傾げてたずねてくるティエリアに、なんでもないよと笑いかけて菫色の髪をなでる。さらりさらりと指を滑り落ちる髪の手触りは絹のようで、ついいつまでも触っていたいと思ってしまう。飽きることなく髪を梳く俺に、ティエリアは仕方がない人ですねと言った感じにため息をつく。
「ニール、今日学校で刹那が林檎をくれたのですが…食べますか?」
「あぁ食べたい。林檎好きのアイツがくれたんだ、絶対うまいだろうしな。」
「それもそうだ。じゃあ、ちょっと剥いてきます。」
 そう言って台所へと消えるその背中を、俺は穏やかな気持ちで見届ける。

―ティエリアの誕生日にプロポーズしてから2ヶ月。
 俺とティエリアは毎日こんな感じだ。プロポーズする前の生活とあまり変わりがないといえば変わりがない。だが、薬指はめたお揃いのクラダリングが確かな変化があったことあらわしている。俺もティエリアもリングをほとんどない外すことはない(俺は手術や処置などでどうしても外さないといけない時はあるが。)

 リングをはめた当初、目ざとく気付いた仲間達にからかわれたのも今やいい思い出だ。
 アレルヤは笑いながら「式はいつの予定ですか?」と言ってくるし、クリスには「いいなぁ、私もはやく薬指にリングがほしーい!」と羨ましがられた。さらにハレルヤとライルには犯罪だのロリコン兄貴だのからかわれ、Ms.スメラギやおやっさんには「今度お祝い飲みするから覚悟しとけ」なんて言われたな(後日本当につぶれるまで飲まされたのもまたいい思い出だ)そんな騒がしい祝いとは逆に、フェルトが控えめに微笑んで「おめでとうございます」と、あの刹那が表情を和らげて「幸せにな」と言ってきたのも印象的だった。

「…俺って幸せもんだ。」
 大切な人と結ばれることを仲間に祝福される―これがこんなにも嬉しいことだったなんて知らなかった。俺はその幸せをかみ締めつつ、ティエリアのいれてくれた紅茶を飲む。口に含めばふわりとアールグレイの香りが広がり、とても深みのある味だ。あいつも紅茶を淹れるのうまくなったもんだ。
 ふと台所に視線を向ければ、ティエリアが苦戦しながら林檎を剥く姿が見えた。しかし、どうにも危なっかしい。
「ティエリアー?俺がかわりに剥こうかー?」
「いいえ、私が剥きます!」
 その姿に思わず声をかけてみたが、ティエリアはムキになって返事をしてきた。不器用ながら真面目に取り組むその姿に苦笑しつつ、がんばれよ、と声をかけた。
 自分の決めたことは絶対にやりとげようとする真面目さやひたむきな純粋さ、ティエリアのそんなところは最初に出会った時から変わらない。
 そう初めて出会ったあの時から。


「あれから4年、か…はやいもんだな。」

**********************

 それは忘れもしない、4年前の学部の新入生交流会。そこで俺とティエリアは初めて出会った。

 毎年、入学式の後は学部単位で新入生と上級生の交流会がおこなわれる。交流会と言っても、大学の体育館で皆で酒飲んでお菓子を食べながら話す―そんなちゃちなもんだ。だが、これは新入生にとっては最初の「大学生っぽいこと」だし、部活の勧誘もこのとき盛んに行われるので案外重要なものなのかもしれない。あと上の学年にとっても、日頃話さない奴らと交流が持てるいい機会だ。
 卒業生である俺は、後輩たちの様子をみるというか、ただ一緒に騒ぎたくてこの交流会に参加していた。卒後一年目が終わったばかりだった俺は、ハードな仕事が続く毎日に少々疲れ気味で息を抜きたかったのだ。俺は同じように参加していた元クラスメイトと酒を飲んだり、持ち前の人懐っこさで新入生の子達とも話を咲かせていた。

 そんな100名近い新入生とその何倍もいる上級生がひしめく中で、俺は彼女―ティエリア・アーデを見つけた。
 彼女は一言で言えば「異質」だった。
 透けるような白い肌に、きりっとした細い眉、切れ長であるが大きな瞳、桜色の薄い唇。さらさらの髪は癖一つ見受けられない。おまけにモデルのようなすらりとした長身だ。
 …簡単に言えば、すっげー美人。
 俺もそこそこ女性とはお付き合いはしてきたが彼女程の美人は初めて見た。彼女の異質さがみえたのはその抜群の美人っぷりもあるが、なによりその表情だった。楽しそうに馬鹿騒ぎする学生の中で、遠目にも見ても彼女は明らかに不機嫌にみえる。どうして自分はここにいなければならない?とでも言い出しそうな面持ちで、馬鹿騒ぎする集団を一人はなれたところで冷ややかに見つめていた。
―折角の美人さんなのに、あんな顔してたらもったいないねぇ。
 世話焼きの性なのか、俺はああいう風につまらない顔をしている奴をみるとどうもちょっかいをだしたくなる。こういう場は楽しんだ物勝ちなのだ。みんなで楽しんだほうがいい。
「よぉ、みんなと話さないのか?」
 酔いも手伝い、気がつけば俺は壁の花状態になっている彼女に声をかけていた。彼女は声をかけられるとはおもっていなかったのだろう、少々驚いたような顔をしてこちらを振り向いた。そしてすぐに顔をまたしかめる。
「…人と話す気分じゃない。」
 それだけ吐き捨てるように言うと、彼女はまたそっぽを向いてしまった。つれない態度の美人さんってのもなかなかいいもんだ。俺は懲りずに彼女に声をかける。
「俺は研修医のニール・ディランディだ。お前さんはなんていう名前なの?」
「…ティエリア・アーデ。」
 冷たくあしらわれても声をかけてくる俺に、目線も合わせることなく不機嫌な声で返事をするティエリア。まぁ名前を教えてくれるだけマシか。
「ふーん…ティエリア、ね。綺麗な名前だな。」
 口説き文句みたいだなと自分でも思うが、それが素直な感想だった。ティエリア。こいつにぴったりの綺麗な響きの名前だ。
「ティエリアはどこ出身なんだ?」
「貴方に言う必要はない。」
「高校の頃はなにか部活とかしてたか?」
「貴方に関係ない。」
「じゃ…何か趣味は?」
「それを知って貴方に何か特になりますか?」」
 こちらを向く気のないティエリアの気を引こうと、色々質問してみるが全て冷たくあしらわれてしまった。年下の扱いには慣れているつもりだったがなかなか手ごわい。ともかく、そっぽを向いたままの彼女の視線をこちらに向けないことには何も始まらない。そう思った俺は思い切った質問をしてみた。
「じゃあさ…彼氏とかいる?」
「…っ、さっきからぺらぺらと!プライバシー侵害もいいとこだ!万死に値する!」
 俺の質問は彼女の逆鱗に触れたようで、眉をひそめ苛立った顔で俺のほうをキッと睨み付けてきた。だがそれも俺の思惑通り。
「ようやくこっち向いたな。」
「…っ!」
 にやにやと笑う俺を見てティエリアは、しまった、といった感じの顔をする。そして彼女は大変不服そうに唇をかみ、羽織っているピンクのカーディガンの裾を握り締めた。そんな子供っぽい動作が中々に可愛らしい。
「折角の交流会なんだ、少し話でもしようぜ。」
 ほら、とそんな彼女にオレンジジュースの缶を差し出すと、彼女はバツの悪そうな顔をしてそれを受け取った。
「話…って何を話すんですか。」
「そう難しくとらえるなって。何でもいいんだよ。自分のことでも、相手のことでも、日常のことでも…自分が気になることを訊いたり話せばいいのさ。」
「自分が気になること…。」
 ジュースの缶を手の中で転がしながら、ティエリアは俺の言葉を反復するように呟く。
「俺はお前さんのことが気になったから、話をしてみたいと思ったのさ。」
 そういって俺はつい、不機嫌な子をあやすような感覚でティエリアの頭をぽんぽんと撫でてしまった。
「なっ…!」
 そんな馴れ馴れしい態度がカンに触ったのか、ティエリアは見る見る表情を強張らせたかと思うと、ぱしりと俺の手を払いのけた。そして頬を赤く染め、こちらを腹立たしそうに睨み付けてる。
「帰ります。」
「おいおい、まだ交流会の時間は…」
「関係ありません。帰ります。」
 取り付く島もない、とはまさにこんな感じか。ティエリアは俺の言葉に耳をかそうともせず、うつむいたまま自分の荷物をそそくさとまとめていく。女の子にしては少々無骨な黒い革の鞄に、配られた資料やパンフレットを全部つめこんでいく。
「それなら家まで送るぜ。こんな夜更けに女の子が一人は…」
「結構です。…失礼します。」
 唖然とする俺にティエリアは形ばかりの挨拶をすると、出口のほうへと逃げるように歩き出してしまった。その華奢な背中がドアの向こうに消えるのを見届けた後、俺はその場にどっかりと座りこみ深くため息をついた。
 そして生温くなったビールを一人寂しくあおる。ぬるいビールはただの苦い炭酸水でしかなく不味い事この上ない。
「…まっじぃ…」
 ぼやくように呟く。すると、俺の背後から忍ぶような笑い声が聞こえてきた。
「ふられちゃいましたね、ニール先生。」
「アレルヤ…お前見てたのかよ。」
「えぇ、ご無礼。」
 俺に声をかけてきたのはアレルヤ・ハプティズムだった。年下のアレルヤは学年は違えども意気投合した仲で、ちょくちょく飲みにいったりしている。
「言っとくが下心はなかったからな。年下は好みじゃない。」
「わかっていますよ。…でも綺麗な子でしたね。」
「そうだな。」
 アレルヤとそんなたわいもないことを話しながら、俺の頭の中は先ほどの美人さんのことでいいっぱいだった。
―頭を撫でられて急に怒りだした彼女。
 それは会ったばかりの男に慣れなれしく触られて怒ったのだと思った。俺も酔っていたとはいえ、やりすぎたと反省している。
 だが、ふと思ったのだ。
 もしかしたら、だ。もしかしたら、あれは怒ったというより…頭を撫でられて、どう反応すればいいのかわからなかったんじゃないかと。人とはあまり積極的に関わりたがらないタイプの子みたいだし、人に触れられることには慣れていないのだろうと予想はつく。
―冷たく振舞ってても中身は何も知らないお子様、か…。
 なんというか、ほっとけないな。俺には双子の弟と年の離れた妹がいるのだが、そのせいかどうも他人の世話を焼きたがるところがあると自分でも自覚しているつもりだ。まったくこれじゃ下心どころか保護者の気分だ、と心の中で苦笑した。
「アレルヤ…俺、やっぱ心配だからさっきの子送ってくるわ。」
「そうですね、最近ここらへんも物騒ですから…なんか変質者がでたとか。」
「げ…それ、はやく言えよ!」
―こんな夜更けに女の子が一人で歩いて帰るなんて、変質者に襲ってくれっていってるもんじゃねぇか!
 俺はアレルヤとの会話もそこそこに体育館を飛び出した。外は思ったよりも寒く、夜の空気が肌を刺す。春だからと薄手のコートを着てきた自分を軽く恨んだ。
「…どこいったんだよ、あいつ…」
 ティエリアが会場を出てそんなに時間は経ってないはずだ。俺はその姿を探し周囲を見回す。すると、体育館会場から直ぐ出たところの横道に何か落ちているのがみえた。何か確認しようと近くに行って拾ってみれば、それは彼女が先ほどもっていた黒い革のカバンだった。
「おい、冗談だろ…!?」
 カバンの落ちていた道は、学校から学生アパートの密集する場所に帰るのに最短ルートの道だ。だが道の端には小川が流れている上、街灯が少ないので夜は暗くなる道でもある。
―落ちたカバン、人気のない夜道、女の子が一人…
 イヤなが想像が頭をよぎる。そして次の瞬間、俺はその想像を振り払うように走り出していた。
「ティエリア、いるか!?」
 走りながら呼びかけるが返事はなく、焦燥感だけが募っていく。
―無事でいてくれよ…!
 心の中で祈りながら、その姿を懸命に探す。

 いくらか走った頃、ふと視界の先に道端の小川に誰かが蹲っているのが見えた。それは小柄な、淡い色の服を着た―…ティエリアだった。俺は靴が濡れることも構わず、川に蹲る彼女のそばに駆け寄る。
「おい!大丈夫か!?」
 するとティエリアは俺の声に驚いたのか、大げさなまでにびくりと体を震わせてこちらを振り返る。
「…ニール・ディランディ…?」
「あぁそうだ。…こんなに冷えちまって。」
 触れたティエリアの身体はずいぶん冷たく、川の水に体温を奪われているようだ。
「ティエリア、立てるか?」
 俺は泣きじゃくるティエリアに声をかける。彼女がこくりと頷くのをみて、俺はその細い肩を抱えて立ち上がらせた。川から出ると俺はその細い肩に自分のコートをかけてやる。薄いとは言えあったほうが幾分かマシだろう。そして、寒さに震える肩をそっとコート越しに抱き寄せる。するとティエリアは一瞬身体を強張らせたが、すぐに安心したかのように俺の胸に身を預けてきた。
「もう大丈夫だから、な。」
 そう言ってティエリアの頭を撫でれば、緊張の糸が切れたのだろう。ティエリアは堰を切ったように泣きじゃくりだした。
「…っ…ふ、ぇ…ぇぇ…っ」
 先程の会場での毅然とした冷徹美人はここにはいなく、今俺の腕にいるのは―不安と恐怖に打ち震える少女だった。
「すごく…こわ、かった…っこわかった…!」
 俺の胸にすがり付いて泣くティエリアは、何度も何度もうわ言のようにそう呟く。
「怖かったな…すごく、怖かったな。」
 俺には彼女をそう言って抱きしめることしかできなかった。

 しばらくの間そうしていたら、ティエリアは少し落ち着いたのだろう。嗚咽は次第に収まっていき、身体の震えも止んだようだ。
「ティエリア、落ち着いたか?」
 そう言って顔を覗き込めば、泣きはらした赤い眼でティエリアはこちらを見上げて、小さく頷いた。そして自分の肩に掛かっているコートを彼女は脱ごうとする。
「これ…貴方が風邪をひく…」
 律儀に俺のコートを返そうとするその手を制し、俺はコートを再び彼女の肩にかけた。
「俺のことは心配しなくていいさ。俺は男だし、何より体力と健康に自信があるからな。」
 それに下っ端研修医として日々鍛えられているからな、と笑いかければ、ティエリアもつられるようにかすかに笑みを浮かべる。
―あ、かわいい。
 初めて見たティエリアのはにかむような笑顔はドキリとするほど愛らしいものだった。動揺が悟られないように俺は何食わぬ顔をして会話をつづける。
「危ないからな、家まで送るぜ。」
 俺のその申し出に、ティエリアは少しためらいがちにお願いしますと頷いた。そんなティエリアに構わないさと言い、俺はティエリアに背を向けて座りこんだ。
「じゃ、俺の背中におぶされ。」
「なっ…!そんなこと!」
「いいから、いいから。そんな状態じゃ家まで歩けないだろ。」
 ティエリアの膝は目で見て取れるほど震えていた。これじゃまともに5mも歩けないだろう。それは本人自身も分かっているようで、ティエリアは言葉に詰まる。
―甘えたいけど甘え方がわからない、か…。
 まったく不器用な子だ。だけどその不器用さは嫌いじゃない。俺は躊躇うティエリアの背を押すように笑いかける。
「ティエリア、年上には甘えるもんだぜ。年上ってのは頼られることが嬉しいからな。」
「………すみません…」
 少しの間の後、ティエリアはか細い声でそう言うと、そっと俺の背中に身体をあずけてきた。背中越しに感じる人の温もりと重みが心地よい。
「ほら、腕を俺の首にまわして。」
「は…い…」
 華奢な腕が俺の首に回り、さらに身体が密着する。すると、ささやかではあるが、柔らかい感触が背中に当たるのを感じた。
―胸、ちっちゃいんだな。
 そんな考えが頭をよぎり慌てて打ち消した。
―これは年長者として、男として当然のことをしている訳であって…決して下心があるわけじゃない!そうだろ、ニール・ディランディ!
 そう自分に何度も言い聞かせ、気を取り直す。
「じゃ、立つからな。しっかりつかまってろよ。」
「…ぁっ!」
 立ち上がるとティエリアは驚いたように俺の首にしがみついてきた。その拍子にティエリアの吐息を首筋に感じ、ドキリと鼓動が跳ねあがる。
「わりぃわりぃ、驚かせちまったな。…なぁ家はこっちでいいか?」
「……こちらの方向を、真っ直ぐです。」
 ティエリアは 勤めて冷静なフリをしようろはしているが、俺にはその動揺が手に取るようにわかる。
密着した背中越しに、ティエリアの心拍が早く打つのを感じるのだ。トクントクントクン―大体110/分くらいってところか。職業柄そんなことをつい考えてしまう。…というか、そういうことでも考えて気を紛らわせないと、俺自身の胸の動悸も収まらなさそうだ。
「しかしお前さん、軽いなぁ。ちゃんと食べてるのか?」
 指し示された方向へ歩きながらティエリアに尋ねる。背負った彼女は驚くほど軽い。華奢な外見から軽いだろうとは思っていたが、ここまで軽いとは思っていなかった。
「…貴方には関係ない。」
 ティエリアの返事はそっけない。こりゃ案外図星だったのかもしれない。
「そう言うなって。…なんなら俺が飯作ってやろうか?」
「…っ!け、結構です!」
 俺の言葉にティエリアは慌てたように言うが、少々裏返ったその声からティエリアが照れていることがわかる。そんなティエリアの可愛らしい反応に俺思わず顔がにやける。照れているであろう、その顔が見れないのがまったくもって残念だ。
「…あなたは、何があったのか聞かないんですね…」
 そんな他愛もない会話の中、不意にティエリアは声の調子を落としてそう呟いた。それは核心に触れる質問だった。俺も先程から悩んでいたのだ。ティエリアに何があったのか、聞くべきかどうなのか。さっき川の中から彼女を助けたとき、これといって外傷や何かされたような様子はなかった。だからといって、彼女に恐怖の体験を語らせるのは憚られた。
「…ティエリアが言いたくなければ言わないでいい。でも、もし言って楽になるなら…俺でよければ聞くさ。」
 たとえば怖い夢を見たときのように、誰かに言ってしまえば気が楽になることもある。たしか精神療法の1つにも、自己の体験を語ったり再現することで恐怖を克服する、そんな方法があった。
「そう、ですね…言ってしまったほうが、きっと楽になるのだと思う。」
 ティエリアは俺の言葉を聞いてそう呟くと、ぽつりぽつりと事の次第を語りだした。
「…会場を出て後すぐ、暗がりから声をかけられて振り返ったら…そこに奇妙な面をかぶった人がいて…」
 面をつけた不審者―それは初耳だった。そう思いつつ、俺は静かにティエリアの話に耳を傾ける。
「妙な話し方で色々話しかけてきて…怖くなったので走って逃げていたら…川に落ちてしまった…」
「…その、面をつけた変質者は追ってこなかったのか?」
「はい。どうやら、追ってくる気はなかったみたいで…。」
 ほっと胸をなでおろす。どうやら最悪の状況は回避されていたようだ。このまだ子供のような少女が変質者に何かされていたら―俺は怒りに打ち震えていただろう。
「こんなことがあったのに変だが…お前さんに何もなくて本当によかった…。」
 そう言うと、ティエリアはが小さく息を飲む気配がした。へんなことでも言ってしまったか、と少々不安になったが、すぐにその不安は消えることとなった。

「心配してくれて…ありがとう、ございます…」

 小さな、だが確かな声でティエリアはそう呟いた。こういったお礼を言いなれていないのか、言葉はどこかぎこちなく初々しい。
 世話焼きな性格なもんでお礼を言われる機会は多いほうだが、こんなに「ありがとう」をうれしく、愛おしく感じるのは初めてだった。
―やっべ、俺…いま顔火照ってないか?
 こんないい歳した男が、お礼ひとつで頬染めるなんて格好がつかない。これじゃまるで恋愛慣れしていない中学生のガキと同じじゃないか!
 俺はティエリアにそんな心の葛藤を悟られないように、何か他の話題を必死に探すそんな時、俺は視界の前方にある物をみつけた。
「ティエリア、あっち見てみろ。」
 そう言って、背中のティエリアをその方向をみるように促す。
「?なんです、か…」
 疑問を投げかけるティエリアの言葉は小さく途切れた。


「きれい…」


 それは桜の大木だった。狭い道の向こう、夜の闇にぼんやりと姿を浮かび上がらせている。
ここら辺は昔からの自然が残っているが、ここまで立派な桜の木があることは知らなかった。
「夜桜か…きれいだな。」
「えぇとても…きれいだ…。」
 ティエリアもこの幻想的な美しさに圧倒されているのだろう、心ここにあらずと言った声で呟く。
さわりと風が吹けば、桜の花びらはその風に身を任せて暗闇を華麗に飛び回る。俺とティエリアはその美しい風景に心を奪われ、しばしの間ぼんやりとたたずんでいた。
「…そういや、弓道場の近くの桜も綺麗だったな。」
 俺はふと学生時代を思い出し、ぽつりと呟いた。学生時代、俺は弓道場に毎日のように道場に通っていたものだ。その道場からみえる桜が毎年立派な花を咲かせていたことを今も良く覚えている。
「弓道場の…?貴方は弓道をしていたんですか?」
 意外そうにティエリアは言う。
「あぁ、学生の頃は一応弓道部主将をやってたさ。」
 あの頃、弓道部の主将として色々と頑張ったものだ。主将としての責務が辛いと感じたことも今ではいい思い出だ。
「弓道って面白いもんだぜ。」
 心を落ち着かせて大きく引けば、矢は真っ直ぐと的を貫く。だが少しでも雑念入れば射は崩れ、矢が的を射抜く事はない。ぴんと張り詰めた空気の中、自らと向き合うあの感覚が俺はたまらなく好きだった。
「…あ、すまねぇな。俺のことばっかぺらぺら喋っちまって。」
「いいえ、かまいません。…貴方の話はとても興味深い。」
 それに、とティエリアは言葉をきると、内緒ごとでも告げるかのように俺の耳元に唇を寄せてきた。その拍子にさらさらとその絹のような髪が俺の首筋をなで、それがくすぐったくも心地よい。

「どうしてだろうか…貴方のこと、もっと知りたいと思ってしまう…」
戸惑いがちに囁かれた言葉は、どんな愛の言葉よりもずっと俺の心に響いた。


―これは…狙い撃たれた、かも。
 俺は年上の成熟した女性が好みなはずだ。気品と色気を兼ね備えた、包容力のある女性に甘えたい…そう思っていたはずだ。
 なのに今、7才も年下の子に心を奪われそうになっている。
 好きになった人が好み、とはよく言ったものだ。そんなことを思った25歳の春の夜だった。

*****************************

 その後、あの夜をきっかけに俺とティエリアはゆっくりと仲を深めていった。
 人慣れしていないティエリアに合わせて、少しずつ少しずつ―
 ティエリアも俺のことは嫌いではなかったようで、不器用だけども甘える仕草を見せるようになってくれた。(手をつなぎたいと言い出せずに、俺の服の裾を遠慮がちに引っ張る彼女は本当に可愛らしかった!)
 だが4年間は決して平坦なものではなく、ケンカをしたり誤解をしたりと色々あったといえばあった。だけどまぁ、結局お互いにどうしようもなく惹かれ合っていた訳で。離れることなんてできなかった。


そして、今のこの幸せに至ったわけだ。


「ニール剥けました。ちょっと失敗したのですが…」
 ことりとテーブルの上に置かれたの皿の上には、ちょっと歪な形をしたウサギがちょこちょこ並んでいる。さっき悪戦苦闘していた理由はこれか。
「お、林檎ウサギか。懐かしいな。」
「フェルトに教えてもらったので、実践したのですが…うまくできなくて…」
 肩を落としてティエリアは言う。何事も徹底的にやるティエリアのことだ、綺麗に作れなかったことが悔しいのだろう。
「そうか?かわいいぜ、ウサギも…お前も。」
「に、ニール!」
 ティエリアの腕を引き寄せれば、ティエリアは体勢を崩して俺の胸へと倒れこんできた。結果、俺の膝の上に座る体勢となったティエリアの身体を俺は後ろから抱きしめる。
「驚かせないでください!貴方はいつも唐突すぎます!」
「すまねぇすまねぇ。」
 ぷりぷりと怒るティエリアを俺は笑ってごまかす。
―こうやって怒る顔が見たくてやっている、なんて言ったら、きっとティエリアは本気で怒るだろうな。
 ティエリアのご機嫌をとるため、俺は左腕に力をこめてその身体を抱きしめながら右手でその頭を撫でると、彼女は途端に静かになった。
「っ…貴方は卑怯だ…!」
 俯きがちにぽつりと呟くティエリアは耳まで赤く染めている。そう、ティエリアは頭を撫でられることに弱いのだ。大人しくなったティエリアを更に抱き寄せ、赤く色づいた耳元に囁く。
「なぁ、ティエリア。あの時のこと、覚えてるか?」
「あの時のこと?」
「俺とティエリアが初めて会った時のこと、さ。」
 甘えるようにティエリアの頭に自分の頭をこつりと押し付けた。菫色のさらさらの髪と、俺のくせっ毛とが交じり合う。
「勿論です。…忘れられる訳がない。」
 懐かしむようにティエリアは瞳を軽く閉じる。
「あの時が、初めてだったんです。あんな風に真剣に心配してもらったり…抱きしめてもらったのは。」
 彼女はそう言いながら、俺のくせっ毛に指を絡めて軽くひっぱてくる。これは彼女なりの照れ隠しなのだ。

「きっとあの時、私は貴方に…心を狙い撃たれてしまった。」
 俺お得意の口癖を真似て、彼女は花が綻ぶようにふんわりと笑う。
 それは俺の大好きな、ティエリアの笑顔だ。誰かに自慢したいけど、誰にも見せたくない―…そんな宝物。


「…俺もだよ。」

俺って、やっぱ、幸せもんだ。


end.

*******************

ニールとティエリアの出会い編でした!
ひたすらに甘い甘い話ですみません;もうとりあえずこの二人をいちゃいちゃさせたかった(←)
日常生活にあるちょっとした幸せや、萌えをかくのが好きなんです。おんぶと膝の上に抱っこは乙女の夢、ですよね…?あとエプロンと意地っ張りな嫁は男の夢!

この話を書く上で、恋はフィーリングとハプニングが大切(友人の談)を参考にしました。
この人がいいと思うフィーリングだけじゃなく、そこにハプニングが起きることが恋には必要!と言われてなるほどと思ったのがきっかけ。確かに、ちょっとしたこでもハプニグがないと恋には発展しないもんなぁ。
あとフラグは大切ですよね。折角フラグktkrと思っていても、いつの間にか折れてたりするから!^^(なんともリアルな話だ!)
弓道うんぬんの話はニールが弓を引いていたら格好良いだろうなぁ、という私の趣味です(!)胴着袴で髪の毛を後ろでちょろっと結ぶニールを私が見てたみたいw


以下おまけ**

4年前、病院カフェテラスでのある日の二人の医師の会話―

「ビリー、私はこの面を気に入っているが、どうもこれをつけていると周りの人間に避けられている気がする…何故だ!」
「グラハム、日常生活でそんな面をつけている人間を見れば誰だって引くさ。僕も正直勘弁願いたいね。」
「この前も学部の学生がいたので声をかけてみたら、全力で逃げられてね…まったく、最近の学生は礼儀がなってない。」
「いやだからね、グラハム。そんなお面つけた人間に声をかけられたら誰だって逃げたくなるから。警察に通報されてもおかしくないレベルだから。」
「この存在感、それでいてこの機能性…この面は最高だと思うのだがな。」
「…君の面へのこだわりは一体何なんだろうね…」
「無粋なことを聞いてくれるな。愛に決まっている!」

「…そうかい。」


面の人は、ある意味恋のキューピッド。

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夏草 史/一二三

Author:夏草 史/一二三
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